ジャガ芋,大根,牛蒡,タマネギ,人参とブロッコリーの茎など残った野菜を大きいまんま、赤唐辛子を効かせたシンプルなスープを作り夜の特番を待ちました。
何度も我が家の食卓にあがる命のスープ、ピリっと辛い黒胡椒とセージに唐辛子が加わり、ミネストローネ(野菜を細かく切ったスープ)と違った大きいままの野菜に火が入ると滋味な風味が一段と増すからふしぎ・・・
特番のドラマは3月10日の大空襲、雨のように降る焼夷弾に焼き尽くされた人々を地上でたった独りの警察官が33枚のフイルムに残し、それを隠し護ったお話でした。
食事の後、一緒に見ましょう!と誘ったのだが・・
母は「嫌だ・・あなた独りで見て!」そう言い置いて2階へ逃げ戻りました・・・東京の、あの空襲がどれだけ酷かったか!を知っている母達世代にはきっと胃の腑が騒ぐのでしょうか。
しかもあの周知に仕組まれたB29に依るピンポイント爆撃は母や亡き父達の疎開先から目と鼻の先、風向きが変わっていれば浅草小島町も我が一族の命も危なかった筈です。
中村トオル演じる警官の丸い眼鏡に映る真っ赤な炎・・凄く印象的でリアルでした。
というのも私は当時3才でオトナシ過ぎるのが災いし、あの空襲時に防空壕へ逃げた両親、親戚に置き忘れられ座敷から池に映る真っ赤な火の手を記憶しているからですが・・
幼児期に見た強烈な「赤」の印象が私の脳裏に何らかの影響を与えているのかしら?赤を手にしてしまう自分は余談だが。
この惨状を激写しネガを進駐軍から隠した警察官の倫理感使命感がなければ、東京下町の人々だけが何故?未だに質素、涙もろい、それでいて胆の据わった、達観した人生感を持つ人間が多いのか!?を日本人に理解されないだろう。
10万人が死んだ屍の上に存在する本所,深川,浅草なのだ。心意気の江戸っ子が夫々の痛みを知ってしまったわけだ、野暮は言えまい。
こんなシンプルなスープでさえご馳走です。
あの大空襲の夜、私は3才。
それでもこうして生き延びて食べていられる・・・累々たる犠牲者を思う時、真面目に潔く生きなければ、相済まない。そう肝に銘じているのです。