六本木スペイン村
ついでにキャンティの横の道を下りていくと、くぼ地のようになった突き当りの所にスペイン村と呼ばれる西洋長家の一角があった。私の記憶していた頃、1973年代初めころまでは順番待ちで空室になるのを待つ入居希望者のリストで一杯だった。外観は白い漆喰壁も傷み建物事態はメゾネットタイプや一軒家等が点在、その窪地全体がどことなく異国的なのだ。
手入れをすれば、もっと童話的な美しい街の一角になるだろう、と想像力をかきたたせるのに十分なほど魅力的な集合住宅だった。「兼高かおる、世界の旅」という人気TV番組のレポーター兼高かおるさんも一時期住まわれていた場所だ。六本木、飯倉界隈を思い出すたびにキャンティ、、ジュン・ロペの2階にあった美容室田中親(パリで客死)の店と共に思い出す場所である。スペイン村ほんとうにお洒落がわかる人々の建物だった。ここへカメラマンの林宏樹氏が順番待ちをして短期間だけだが、念願の入居をされた。その情報を聞き付けるとお宅へ仕事にかこつけて訪問したことがある。
一目、伝説のスペイン村の内部、見たかったのが正直な所だった。外ドアを開けて急な階段を昇るとメインのドアがある。開けると別世界が広がっている。縦長の居間につづく濃い色の床板は頑丈で、壁紙の白い壁。天井から下がるアンテークのガレの照明。どっしりとしたドレッシングチェスト。ヴィクトリアンスタイルの長椅子・・・ゴブラン織りのカーテンどれを取っても溜め息がでるような、小物で飾られた部屋には何百万もするフランス人形が座っている。縦型の窓のせいでほの暗い印象を除けば、あの70年代に急激に流行り始めた、モダンなマンションより数段、私には魅力的だった。不便さまでがほんとにおしゃれだった。
アンテークコレクターとしても有名だった林氏は私のスタイリストの恩師でもあった。あらゆる美意識を、それこそ手取り足取り、氏から教えていただいたように思う。私の好奇心を察知されてか、右手のコレクションルームのドアも開けてくださった。一歩、中に入るなり私と助手の阿部ちゃんは目を見張った。小さい部屋なのに丸ごと展示室になっていた。
続きを読む…