昨日、観た中国の秦の始皇帝を題材にした映画「ヒ−ロー」は衣装の美しさが飛び抜けていた。
黒沢明監督の「乱」でアカデミー衣装ザイン賞を受賞した日本の誇る和田エミさんの仕事である。
2年以上の歳月をかけて取り組まれたであろう力作は優美さと洗練に満ち、機織りから用意したのではないか?と思わせる布の量感の美しさは、布の重さ、性質、動きを熟知したデザインだ。
どの場面も息を飲む美しさと色・・・こんな作品は生涯にそう出会えるものではない。
和田エミさんも渾身で打ち込まれたにちがいない。
陳藝謀監督のメーキングを観ていたら、楽し気な和田さんがスタッフとして写っている。
敬虔な仏教徒、ジェット・リーに彼手製の数珠を頂いて満面の笑みをもらす満足気なお顔も輝いていた・・手相もご覧になるらしい。
構想3年、撮影6ヶ月有余、映画を1本作り上げるまでに係る気の遠くなるような時間に目眩を感じる、
完成へと、纏めあげるまでにスタッフに強いられる沢山の犠牲も数え上げればきりがないだろう。
監督の言葉は静かで強い。
「人々の協力なしには何一つ出来ない、画面に写る役者はもちろん、それ以外の沢山のスタッフに支えられている、」
初めて陳藝謀監督に指導された時はチャンツィイーは演劇学校の生徒だった。
今では人気一番の若手女優だが「初恋の来た道」でドアを開けて飛び込んでくる表情がどうしても出来なくて不貞腐れていたら、
監督は怒りもせずに側に来て、静かにこう話したそうだ・・・
「君達役者は画面に写る映画のほんの一部の人間にすぎない、もし君が投げやりな気持ちになってしまったら、
見えないところで一生懸命支えている他の人達はどう思うだろうか・・・」
それを聞いてチャンツィイーは号泣してしまったそうだ。
「それからは全ての人々、一緒に映画を作るスタッフに感謝の気持ちをわすれません」と。
続きを読む…