文字
両親の名を並べた夫婦(めおと)のお位牌がとどいた。
仲良く収まったふたりの名前を一目みて、あれ?弱いぞ、線が細いな〜と、ぎょっとする。
二つ並べたのでその分、文字が小さくなったせいか?否。良く良く眺めてみたら・・・発見したことはせっかく手描き文字なのに収まり過ぎて文字がただ行儀良いだけで、心が映し出されていないのだ。
「この書き手は若い人なのでは?」思わず訊いてしまう。
絶句する仏壇屋さん。彼は書き手を把握していなかった。
多分、恕の意味もわからずに、文字を写しただけなのだろう。書き手の修行が未だ未だ足りていない。器械彫りを薦めたわけだ・・・。これからは、昔の職人のように文字の画数、意味をも含んだ、礼儀正しくも気迫ある文字を書ける人は、どんどん少なく成って行くのだろう。
阿吽で出来上がった父の位牌作成とは大違いだった。来てくれないので仕方がなかったのだが・・・
打ち合わせをしすぎたせいで、萎縮させてしまったのだろう。
コンピューターで書いた見本文字そっくりなのが嫌だった。
優しいといえば優しい、だが弱弱しいとも見える。
全く、日本全体がやっぱり一億総素人になったのだろう。父の咳払いが聞こえた・・・