一番好き、といっても過言ではない写真家は鳥取の砂丘を映す植田正治さんだ。
そのモノクロでシュールな写真を大昔習っていた絵の先生に連れられて二科展で見たのが最初のはずだ。ぐるっと見て回った絵画よりも自分は写真の方が好きかもしれない、という漠然とした思いを抱え写真の前に立つ私へ決定的瞬間になるくらいインパクトが強かった。
曖昧な記憶力で名前をはっきりと覚えられなかったが、その後、カメラ毎日や芸術新潮などの特集を目にする度に「そうだ、この写真が好き!」と強く思いつづけた青春がある。
隙のない構成力で砂丘に配置される人物の絶対的な立ち位置、落とす陰、さしだす帽子、割烹着姿の御近所の夫人方のかざす黒いこうもり傘のシュールな対比、この美しさはファッションを遥かに越えて強く見るものに迫ってくる、どの時代から見ても新鮮さに驚かされる。
去年、息子から「植田正治さんという写真家を知っている?と聞かれた時、「確か砂丘を映している方だと思う、下の名前はおぼろだけど素晴らしい写真よ、1番好きかも知れない」と再度答えた。
息子から知らされたサイトを確認した時、今度こそピッタリとお名前と作品が一致した。
不思議な御縁をいただき息子はパリで植田さんのお孫さん仲田薫子さんと御会いしたそうです。目下植田正治氏の回顧展はスペインからヨーロッパを3年かけて廻っているのだそうです。
強く「好きだ」と憶い続けると時空を越えてこんなに次世代同志へのチャンネルが開くものなんですね、と改めて感じ入る。
私のスタイリスト時代の先輩、高橋靖子さんが、やはり植田さんの写真を幼少時によく見ていた、と書いていらしたので、あぁ・・時代が同じなのだ、とその共通性を喜び、続いて飼い犬君の名がココ・・・に更に驚く。
名前の由来はきっとココ・シャネルかしら?私の亡くなったココ猫はシャネルからです。多分シャネルの服は一枚も持たない私達、でもきっとシャネルの生き方が好き・・・。時代の放出するエネルギーを、様々にキャッチしながら高橋靖子さんに出会った事で広告の道に入った私です。
アシスタント同志が親友という楽しいおまけも、現役の頃はもちろん今も雲の上のお人でありますが犬好き、猫好きという違いは今だ現役、片や隠居暮らしにも顕著です。
永遠不滅の植田正治氏も犬好きに違いない。
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