老の嗜み
京都の老舗料亭が東京進出に賭けたドキュメンタリーを情熱大陸で見ていると、大女将が
「息子に一切、任せてますけど、資金は出してぉへん、なんと言うても歳を取ってからお金がのうなるのは切ないもんでっしゃろ・・・」とTVで語っていた。
それは確かにそうだろう。こんないかにも大金持ちのお人だって、晩年に具えご自分のお財布の紐をおしめになる。ところが我が家ではどうか・・・御葬式はしなくて良いから・・・と母達が急に言いはじめた頃からちょっと様子が変わってきた。お花なんか買うと怒ったほどの情緒音痴だったのに最近は率先して花も飾る。「生きてるうちに花だって見なきゃねぇ」とか。「仏壇に飾ってもらっても食べられないんじゃぁ」と言いつつ御団子を頬張る。「毎年下ろしても後10枚も着れないから・・」と、箪笥のこやしだったよそ行きをどんどん普段使いにしはじめた。
90過ぎるとみごとに友人、兄妹が居なくなる。跡継ぎの長男も産まれず終いだし、見栄をはる必要が何処にもない。
御婿さんに迷惑をかけたくないからと尊厳死協会へ入る!と言い出したのだ。病院で延命治療(マカロニ状態のチューブ)をパスするにはちゃんと登録しておこう、と母が言い出した。なるほど、と資料を取り寄せて検討し、さっそく入会させた。こうした事は老人から言い出してくれないかぎり中々踏み切れるものではないが、どうやら我が母は老いのたしなみに目覚めたというか、精神が自立しているのか何でも前向きで頼もしい。クヨクヨするところが無い。
目下我が家は「ここにお棺を置いて両側にカサブランカ山ほど活けて、ホラ、これが燭台ね。玄関から入って事務所に抜ける動線も確保してあるから大丈夫心配しないで素敵なお通夜を企画してあげるから」と言った普通では憚るような会話も平然とする。うん、うん、と凄く楽しそうに聞いてくれる両親。そんな彼等を見ていると・・・老人の爪、はがすような監督不行届きな施設、病院へは絶対に入れたくない、と改めて思うのだ。
お金がなくとも老後は安心、それが普通のあるべき社会の姿だろうに何処かがズレた。おかしい日本・・・・。
P.S.
本日の工夫、蓋付きポリバケツに漂白剤を混ぜた水を入れて脱衣所へ置く、爺様がお風呂タイムに越中フンドシを自らポイ!と投げ入れます。2、3日で真っ白くなります。それから洗濯、厭な思いは誰もせずに済みますし手も汚れません。