襟足のヒミツ・・
人間ひとつくらい取り柄はあるもので、家の母は忍耐強い。あとは何かな?と考えていたら昨日思わぬ所を発見しました。
最近母の写真を撮らないのは日々通院でお洒落が行き届いていない事と、去年の暮れに美容院の先生に「パーマを掛けてばかりいると髪が痛むし奥さんのこの髪型が1番贅沢だから」とクリクリパーマを止めて短くカットされて戻ってきた髪型がまるで似合わないのだ。
突然に凄くお婆さん風になってしまいました。マ、お婆さんなんだけどセンスが欠片も無い髪型。
びっくり問い質すと「だって何時も貴女がパンチパーマって言うから・・先生に言われた時、それ思い出して・・」と口籠った。
正しい言葉を使わないといけなかった。
母は親戚のお呼ばれや法事の数日前に美容院へ行く癖があるのだが、すると掛け立てのチリチリ・パンチになってしまう。
「あらかじめお呼ばれの日にちは分かっているのだからせめて10日前か2週間くらい前にパーマをかけるとフンワリとしたカールになって薄毛をカバーできるから早めに行きなさい!」
そう伝えたつもりがパンチはみっともない!が強く彼女の脳裏にインプットされてしまっていたらしい。
カール部分全部切られてどの施設でも似たような一律老人の髪型になって戻ってきた。
家族に丁寧に嚼んで含めるように言葉を伝えるのは、つい省略し過ぎて難しい。「伸びたら又パーマをかければ!」と慰めていましたがこの冬の寒さか?美容院の外階段5、6段が手すりも無くて辛いらしい。予約するはずの日曜に出かけなかった。
昨日の朝、病院へ行く前に首の後ろの伸びた髪をしきりに引っ張り切って欲しそうに「美容院の先生は後ろを刈り上げてくれないのよ、私ここが伸びるのがとにかく嫌」と何度も言うので内心面倒くさいな!と思ったけど「よし、じゃ後ろだけ切るかっ」と私。
そして鋏を入れてバッサリやって驚いた。
母の首筋の髪は下から上に向って綺麗につむじが登っていて、つまり絶対にアップが似合う髪のはえかただったのです。そこが濃く渦巻いて密集して髪量も多いので切ると損。
刈り上げようとズイっと入れてしまった鋏なので結局首筋の巻き毛をT字剃刀で剃り、なんだか増々貧相にしてしまった。
美容院の先生はプロなので母の髪の流れを見て決して後ろを刈り上げなかった事に今頃気がついたが既に遅し・・・。
着物ばかり着ていた頃はアップだった。股関節の入退院の際に洗髪が面倒と言われ渋々短い髪にしたんだった。
髪の毛の多い頃はボブ風で毎週美容院でセットそのうち髪の少ないのをカバーする為にパンチパーマ風にしてからも10年は経っ。
「どうせ誰も見ないわよ!!」が口癖と無関心でいて済まないような気持になる。富士額(びたい)とアップの似合う襟足を見落としていた私だ。
「まぁ、お抱えスタイリストに短くしてもらっちゃって・・」と嬉しそうに言うので
「まだ外は寒いから帽子を被りなさい」
慌てて私は鏡を覗く前の母に帽子をかぶせ細い首の毛足の剃り痕の剥き出しになった所へタートルの襟を引っ張り上げ「ちょっと濃いめに口紅をつけなさい。」とか声をかけて空咳をゴホンと一つし・・姉の黄色い声を想像し暗くなる。
「美」という字は、「羊」からきているそうです。不思議ですね。
パトラさんのお母様への接し方というのは、僕にはなんだか不思議な感じがします。
なんと言っていいのか分かりませんが、「母と娘」「女同士」「年を取るということ」・・・
そんなことが息子としての僕、男としての僕に、泣けてくるような切ない想いを感じさせます。
できることならば、病気やけがに負けないように、自分らしさを失わないように、年を取ってゆきたいものです。
そして、できることならば、誰もが幸せに、年を取って行けたらいいなぁと思います。
コメント by 変人です(^▽^) — 2006/1/19 木曜日 @ 3:39:54
>おはようございます変人さん
..泣けてくるような切ない想いを感じさせます。
それは変人さんの感受性が豊かで繊細なんだと思います。
私の息子はメールでこの襟足のヒミツについて
「おばあちゃんの襟足の話、笑っちゃわるいけど笑った。」と書いてきましたよ(笑)。
私も自分で書いてつい笑ってしまったのですが君のコメントを見たらちょっと泣けました。
私の目下の心配は髪が元に戻ってパーマをかけられるようになるまで首の後ろの剃り上げてしまった髪・・多分不精髭のように突き出るだろう!恐怖なんですが母は鏡を見た後
「クックックッ・・・帽子被ると正真証明、立派な婆さんね 」とさも可笑しそうに笑ってました。
美人じゃないけど羊のように従順で良い性格!と言う事ですか?。
私は母を生きてゆく一人の同志として観察しながら老いを我が身に照らし学でいるのですが・・・・
コメント by patra — 2006/1/19 木曜日 @ 7:03:24