クリスマスローズ
考えこんでしまった。ふつうであれば,先ず心配等しないのだが、パリに居る息子の胸中を思い辛かった。
好きに生きたらいいと常に思っているが,時代を読めない時に、どうも向こうで家を買う気になっているらしい。
自分のお金で賄える物件が在って、いたく気に入ったようなのである。
「どう思う?」と問われて考えこんでしまったのだ。日本でこの先、家を持つのは絶対に薦めない。パリで生涯、食べて暮らせるのなら好きに自由に生きるがいいが,買うという事に賛成できない。
私を心配する必要は全く無い。上手に公共の仕組みを利用して自立して行けるし,万一の手だてもキチンとしてある。
では何が答えに詰まるのか?
日本人は永久に海外で暮らすにはデリケートな人種である。きっと何時かは日本が恋しくなるだろう。
子供の居ない二人が家は買ったがお金は無くなる・・・そんな選択肢が果たして薦められるか答えに窮したのだ。
不自由な身体で今以上に仕事ができる幸運が続くとは考え難い。子でも居れば話は別だが、遺伝性の筋肉の病気を持つ我々家族は血脈を断つ覚悟が必要なのだ。パリの夫婦も十分に話し合って結婚したはずである。
健康に産まなかったという心の汚点がこんな時、胸に重くのしかかる。
「日当りが良くて段差が無い南向きなんだよ、相当に心動かされたけど不相応なので諦めた・・・」
そのメールが来た日は息子の誕生日なので花、クリスマスローズの大きいのを部屋に生けてもらって居たのだが、息子の心中が痛いほど伝わった。
妻を喜ばせたい!という思いが,人並みの男以上に頭をもたげたのであろう。
だが人並みの男達だって家を持つのは並み大抵ではいかないのだから・・・日本の土を二度と踏まない、骨を埋める、親兄弟を思い出さない・・・そんな覚悟があればの話、買うのは容易くても維持する事は難しいし,売る時にはごっそり税金がかかる。売ったら損だ。「投資になる」とは一概に言えない。
便利で明るい部屋を借りれば良い。昔から持ち家よりも借家住まいのほうが多かった日本。何時の頃より一億総持ち家主義になったのだろう。フランスだって借り家のほうが多いはずだが・・・
家の件はじっくり考えるとして日本に戻らない方が良いとは思っています。福島原発4号機や地震、政治のお粗末等、もう末期的現象じゃないかと危惧しているからだ。彼等にこそ幸運を・・・
でも其れを気の毒で言えない。
すると今朝海外の友人からメール。
今HPを拝見しました。
息子さんの家の件、差し出がましいけれど購入を勧めたいと思います。
私見は:
もう十年以上(?)パリで仕事をしてきた事実
これからも続けられる自信と実力が有る
経済の低迷期には 家購入は買い手市場
買えるだけの蓄えがあるか 又はローンを組める(外国人でも出来るはず)
ローンの利息は税金控除になる
家を持つことで、ほぼ永住を決意(もう、すでにそのつもり?)
何よりも、気に入った住処での生活に張りが出る
日本が恋しかったら、たまに帰国すれが良い(その方が良い所のみ楽しめる)
パリの水が自分達に合っていると思うなら永住できる
フランスは日本に好意を持つ国であるし、息子さんご夫婦は友人が多い
以上、プラス面のみ並べてみました。
マイナス点は
ぱとらさんから遠い事くらいしか思いつきません。
ありがたい意見だった。
息子の身体は何処に居ようが治るわけではないのだし・・・彼に転送しました。