スッポンスープと焼いた刺身
「あたし、やっぱり胃がんだわ・・・実感しちゃった!」と母。一昨日はバナナとヨーグルトを吐いてしまい怖くて何も食べられない状態でした。昨日も様子をみながらやっぱり何か食べないと・・・お風呂の後,アイスじゃないかき氷を食べたらシャキンとした、と張り切ってます。お饅頭も大丈夫だった、と、でもヘルパーさんが買ってくれたうどんは汁が不味くて全然ダメだったそうです。「ほらみなさい」と私。だんだんと食べられなくなる日もふえるだろうと通販で「スッポンスープ」を注文しておいたのが届いたので飲ませました。「おいし〜〜い」とご機嫌でした。スッポンスープの缶を見ると家族の中に誰か病人が居るのだな〜とシミジミ実感をしてしまいます。いのちのスープと共に病人にはなくてはならない食べ物でしょう。
わざと残した鯵のお刺身を生姜とお醤油をかけてオーブンで焼いてあげます。このお刺身を残しておいて翌日,焼いて食すのを何より好きだった父の流儀でしたが本当に美味しい。この焼いた刺身は川端康成氏も大好きだったらしく姪ごさんの記憶にも、文豪自ら火鉢で焼いた刺身の一切れを小皿にのせてホイと渡してくれるのが愉しみだった、と何かで読みましたが定かではありませんが姪ごさんは母と同級生だったのでそこからのソースかも。父はくれはしませんでしたが、反対に良く宴会をした私が大皿にダレて誰も手をつけないまま,残った刺身をササっと引き上げようとすると,慌てて箸を出す殿方がいましたけど心の中で「これは父用です」と気づかぬふりしてしまい込みました。
翌日、晩酌用に焼いて出してあげると、たとえ3切れでも喜んだものでしたが私も年をとるにしたがって父流儀が染込んでいて、わざと刺身を残すという贅沢を覚え、ひとり笑ってしまいます。