敬礼!の背中。
紹介されたクリニックが分かり難い所だったので姉が車で父を連れてゆきMRIを無事に撮り戻ってきた。日本橋高島屋の裏辺りの,ここは個人病院へデータを送るためだけに断層写真などを写す専門のクリニック、診察は一切しないそうだ。
主治医の元へデータが届くのを待ち再度、診断をするわけだ・・・。
父のように大学病院を嫌う患者さんにもMRI設備のない町医者にも便利なシステムになっているらしい。
独りで行く!と言い張っていた父を叱って姉におねがいしたのだ。
姉の話では八重洲界隈は昔の面影が全く無くゴチャゴチャしたスラム化が進み分かりにくい雑居ビルだらけで「一緒に行って良かったわよ〜、父さん一人じゃ危なかった」と報告してくれる。来週も結果聞きにくるから!と、とんぼ返りで帰りそうになると、父が『TVの位置を窓側に変えてくれよ、足元じゃ布団で半分、見えない、て言っただろう?』と慌ててダメ出し。
「あ、そうだった、忘れてた!」と笑いながら2階へ駆け上がる姉。
先週変えたばかりのTVを、キゃスタ−付きの台に載せ窓側へ。こうした時でも自分の事しか考えない殿老人。絶対に我慢をしない人だから病気になると途端に我が儘、煩くなって困るのだが・・・私に出来ない力仕事をしてくれる姉は頼もしい。
夜、ヤクルトを飲みに降りてきた父の背中に「ヴァンテリン」を塗ってあげると
「ありがとさん」・・・ん?と耳を疑った。
口は達者でもすっかり背が縮んでいた。あちこちにホクロが目立つ萎びた背中に最早、何も言えやしない。仙人さまのお背中のつもりで丁寧に塗り、抜き衣紋のままションボリと立っている姿に笑いを堪えパジャマを着せかけて差し上げました。