若い人は知らないかもしれないがサントリーといえばウイスキー、開高健や山口瞳の名作といわれたコマーシャルを沢山世に送り出した演出家が居た。男っぽい映像世界と心に響くコピーは、ひと味違う格調高い企業コマーシャルとしても人気があり、そんな作品を500本近く残し2007年の暑い夏に逝ってしまった東條忠義氏は友人のご主人だった。去年、私が又骨折入院している間に1周忌のために間に合うように彼の仲間が作品集として出版した本を、先日送ってきてくださったのだ。
宣伝会議から出された「CM作家東條忠義 CMで綴った六十秒のエッセー」広告に興味のある方は必見です。
ここ二日ほどじっくりと読んでみる。想い出を語る人々から氏は男が男惚れする人だったのだと知った。残念なことは掲載されているCM作品の写真が小さい事。どの広告も懐かしく格調高い作品で、東條さんがクライアント、スタッフに恵まれた幸せなCM作家だったのだ、と改めて知りました。
開高健の魚釣りのCMや山口瞳のサントリー角瓶「雁風呂」のCMなどリアルタイムに見ていたころ氏は雲の上の存在で 同じ業界の駆け出し、お会いする事など一度も無く、ただ東條さんが良く組んで仕事をなさる國房魁カメラマンとは仕事をしていたのでサントリーのCMはどれも注目していました。羨ましいくらい男の匂いのする仕事で隙も無駄も媚びもない作品群は70年80年代を代表する日本文化そのものでした。
10年前、そんな遠い存在の東條さんが友人のスタイリストのパートナーになられ,急に身近になり晩年病気で亡くなるまでの3年間、相談役として友人を励ましつづけてきた私にこの遺稿ともいえる本は「たくさん」の思いを運んできました。
素晴らしい仕事だけをし続けてきた男の生き方の裏側に・・・深い孤独などを。男と女では残す仕事の量にも質にも違いがあり過ぎることなどを色々と考えさせられました。
友人の ためには最後に氏が出会えた人だった事を心から喜びました。自分を彼の人生に「・・・巻き込んでくれてありがとう」と言う彼女の言葉が実にすてきでした。