わたしの城・・・作家・城夏子
東京オリンピックから9年目・・・まだサラリーマンの初任給が10万未満の時代、小説家城夏子さんは持ち家を売ってここ、千葉県流山市の協栄老人ホームへ入られた。
この写真は何かの週間誌の取材に小文とともに載っていたものを台紙に貼って母が大事に取って置いた切り抜きです。
昭和48年10月18日・・・と母の字で日付が記されている。
城夏子さんのファンだった母が大事に日記にはさんでおいたものを出してくれたのです。書かれた夏子さんの文章を抜粋すると・・・
領地は3万坪(には欠けるけど)ある。その中の松林や芝生や、神秘な朝霧や林のかなたに落ちる大きい夕陽を、朝夕ながめて暮らすわが城は,残念ながら私だけのものではない。
300人近くのさまざまな性格の老人たちが。画一的な個室をめいめいの好みに飾ったり飾らなかったりして住んでいる。
領地は3万坪でも私の城なんてまあモミジの葉ぐらいの大きさでしかない。しかしとにかく、前述の風景のまっただ中にいるのだから,私にとっては幸せの限りである。室内はヨーロッパ産の小道具で飾る。
仕事場兼寝室は花壇を象嵌したかと見える広い芝生を見下ろす窓が2つもある4帖半。客を通すのは,座ったまま松林の見えるサンルーム付き6帖。そこに季朝の飾り棚を模した山陰民芸品のビュロオをおいてある。姿が華奢だから。引き下ろした書き板に、原稿用紙を置くより、便箋をおいて愉しいてがみをかくのにふさわしい。
写真・小久保 善吉・・・となっています。
私が青山に事務所を借りたころで、その事務所も6帖と7帖のダイニングキッチンがあるだけの、名だけは恥ずかしくなるようなハイネスなどという立派な名称のマンションだった。
大事に取っておいた母はこの流山の老人ホームにも夏子さんにも憧れていたのだが、この写真を手渡しながらちょっと哀しそうに
「いまみるとずいぶんと質素だわね〜」と呟いた。
一段下のテラス側?(板の間にしか見えない)に立つ夏子さんは、私の記憶より大柄にみえるのは飾り棚が低く夏子さんの足下が切れているせいでしょうか。ロウケツ染めの座布団カバー、猫の置物、イタリア製の木のゴミ桶、薔薇の活けてある花瓶などにあの時代の風景が蘇ります。
ファッションはミニが廃れウォッシュアウトのジージャンに刺繍やラインストーンの手づくりジーンズが若者の間では流行っていました。48年といえば浅間山荘事件のあった年でもあります・・・。
今や特養でももっと豪華だが、夏子さんのいた時代の充足感が溢れていて、何かを訴えかける、そんな貴重な写真です。
こんにちは。お久しぶりです。今日、ブログにお邪魔しましたら、城さんの記事を発見! いかにも城さんらしい写真とお部屋ですね。
お母様は城さんのファンでらしたのですか? こんな風に切抜きを大切に持っていて下さって、城さんもさぞやお喜びでしょう。
私も切り抜き写真、楽しく拝見しました! ありがとうございました。
でも、日々のお料理写真のおいしそうなこと! 食いしん坊の私はそそられっぱなしです。
コメント by Marie — 2006/10/1 日曜日 @ 19:47:21
Marieさん
母は大の城夏子さんファンで文才以外の浮き世ばなれした部分ほんの少し似ています(笑)
私も初めて見せてもらった切り抜きでびっくりしました。
あの素晴らしい絵を描かれる絵描きさんのお隣はMarieさんですか?あまりの美人度♪に何度も訪問しながら、まるで殿方になったようで気恥ずかしく、おもわずコメントするのを忘れました。
あの色の口紅が似合う、本物美人さんを久々に拝見し、感激です♪。
体重の増加を考慮にいれなければ献立ももっと何とかなるのですが・・・
あの陶器のお弁当には、とうてい敵いませぬ。
コメント by patra — 2006/10/2 月曜日 @ 0:37:34
お母様が大切にとってらしたその気持ちが素敵だなぁ、と思います。貴重な切抜きを見せていただいてありがとうございました。
淑ちゃんがそれをとても喜んでくれるので、「淑ちゃん孝行」だと割り切り、思い切って。
私はPatraさんのお料理を目で堪能させていただいております。毎日、本当にご馳走様です(^^♪
コメント by Marie — 2006/10/3 火曜日 @ 10:29:51
考えてみると、母の膨大な切り抜きをずいぶん処分した娘です。反省。
母の日記だけでも大変な数なので、ブログという電子日記になった、今の時代は身軽で便利ですね。
「淑ちゃん孝行」
90才で若いお友達の居なさる淑さんが実に実に素晴らしい。嬉しそうですてきなツーショットでした♪。
秋の今頃は体内の毒素を出すために徹底して粗食、ひじきやちりめんに納豆、海苔に根菜、生刺身だけです。
冬の多少脂こい食事も大丈夫なように整腸してるつもりなので地味なので写真はパスしました(笑)。
コメント by patra — 2006/10/4 水曜日 @ 14:36:05
patraさん、
はじめまして!
日本経済新聞の土曜日朝刊では、いま、瀬戸内寂聴さんの
「奇縁まんだら」というエッセーが連載されていまして、
先日の土曜(2/9)が「城夏子」さんでした。
(来週にも続きます)
「城夏子」さんについてはお名前を今回初めて知ったので
ググってこちらの記事にお邪魔しました。
貴重なお写真を拝見させて頂き、ありがとうございました。
コメント by Kimball — 2008/2/11 月曜日 @ 18:36:52
Kimballさん
こちらこそはじめまして!
日経は購読していませんが城さんと寂聴さんの交流は、城さんの晩年の著書で知っておりましたので想像がつきます。
流山のホームをお尋ねになった作家は確か寂聴さんだけだった・・・そう記憶しております。
城さんのエッセイは晩年が素晴らしいです。
寂聴さんの若い頃を目撃しております、全く今の童顔とお変わりにならない・・長い髪をひきつめ後ろに纏めお着物姿でした。ご参考までに
コメントありがとうございました。そちらにもお邪魔させて頂きました。
楽しそうな日記ですね♪
コメント by patra — 2008/2/12 火曜日 @ 0:47:48