稲ちゃんの訃報
大御所をそう呼ぶのは同年代だからと大昔、二人共新人だったころからの知り合いだったからですがいかにも精悍そうな稲越功一さん の訃報を息子から聞いて驚きました。
私の事務所には何枚かの有名な写真が飾ってあるのですがその1枚は稲ちゃんのモノクロ写真。大昔に頑張って買いました。今でもすごく気にいってます。
小さい奇麗な稲越さんの事務所が駆け出しのスタイリストの私には美意識のお手本のように見えたものです。きちんとした物の配置などに拘りがあって印象的に覚えているのは間隔を開けて床に重ねられた雑誌の上に重しのように石がのせられていた、さりげない風景です。
石ころまでがお洒落でした。
無口で,多分すごくシャイ・・撮影の待ち時間に絶えず本を読んでいらっしゃるちょっと近寄りがたい印象でしたが吉右衛門さんの写真集出版パーティとその後,銀座のバーkoolでお見かけしたのが最後で私の引退後は音信が途絶えました。
そのご中国やモンゴルの過酷な撮影風景をTVで見ると、逆だつ髪の毛にちぎれんばかりにはためく衣服に風のもの凄さを感じ,撮影中、白いマフラーに紺のスーツ姿のスタイリッシュな稲越さんしか知らない私は、新しい世界へ挑む姿をも秘かに応援していました。
どうもその中国やモンゴルの取材中に荒れ狂う黄砂が肺にダメージを与えていたのかもしれません。今も展覧会を開催中、亡くなる間際までエネルギッシュに活躍されていたのだ!と知って男は偉いな!とつくづく思うのでした。それにしても早過ぎる死です。天国でもファインダーを覗いていてほしい。ご冥福をいのりつつ。