2007/9/24 月曜日

退院作戦

Filed under: エッセイ,骨折日記 — patra @ 6:48:16

「失礼ですけど、貴女は何処がお悪いの?」そう声をかけてくる同室の患者さんもいるくらい、はた目に私は元気に写っていたようですが、只の骨折にしてはどうも松葉杖練習もせず、何処をどうしたの?と疑問を持たれたのです。
看護師さんさえ「申し訳ない不勉強なんですが、何故イチダさんが立ち上がりが不自由なのか、始めは分かりませんでした」とお風呂介助の時にも言われました。

普通の骨折患者は骨が付かなくとも松葉杖の練習をし歩くことは、両足不自由でも、結構上手に出来るものなのに、手の力も弱い私は「一般的」なリハビリはかえって危険なのだ。ピックアップで歩行練習するにも肩に力が入ってしまう。
つまり腕や脚の骨の力で立っているようなもの・・・腕も手の平も真っ赤になってしまうくらい負担がかかるのです。
先天性ミオパチー患者が骨折し入院するのは、きっと病院側も初体験なのでしょうから、こうなったら自分の身は自分で自宅リハビリをしよう・・・と伝えると、
「え〜珍しいですね、皆さん,病院から出るのを嫌がるのに・・」リハビリ療法士の先生が驚きます。
いくら病院で慣れても自宅で慣れなくては意味がありませんから!と私も腹を決めました。
早速、アビリティ−ズ社に電話を入れておいた座面が高くなるグッズ等を病院へ持ってきてもらう事にしました。

リハビリグッズではブランドとして有名なアビリティーズ社はすぐにデモ商品を山にして病院へ運んで来ました。何事か?と目を丸くする看護師さん達。

車椅子は今まで座ぶとんを敷いて座高を上げていましたが、空気圧で座面を高く調節できるロホ・クッション、弾力があってとても具合が良いので、10センチの高さを自費でお借りしました。本来ならば病院に備え付けてあってしかるべきクッションなのです。
これを車椅子に敷いて立ち上がりを練習したら、手すりに掴まりながらもその日の内に立ち上がれました。レンタル料は月5千円です。
其の時、座面から立ちあがるバネ状の跳ね上げ式とかも推薦されたのですが、脚がしっかりしていない私には、かえってバネの勢いが怖かったので、これは却下。
滑り止めのシートも奇麗な緑色のチェックを自宅用に2メートル購入。日本製と違い洗っても効果が落ちない上に汚れも付きにくい利点がある置くだけの(接着剤なしの何度でも剥がせる)シートです。

私が欲しかった椅子、自動で上下しブレーキが手で届く範囲にあるアメリカ製の事務椅子がやはり気に入りました。回転に85センチあれば良い小回りが利く椅子です。
問題は値段、自費で購入するには2拾数万も掛かるのです。
介護保険で借りるには、障害の判定が2以上なくては借りられません、その判断は担当医の診断書を元に区役所が査定をするので1ヶ月ほど時間がかかります。

担当医に書類をお願いをする。
「それは退院する時でしょ!」・・もう待てない私。

1番の問題はトイレとシャワー椅子。まい日の事です。自力で快適に過ごしたいものです。

介助を目的にしている椅子は大概、ブレーキのある場所が危険なので障害者本人の手の届かない後ろだったり座面が介護し易いように、非常に低かったりと、私には使いものにならないモノばかり。
事情を知らない人は「え?どれでも同じでしょうに!?」と言うがトンでもない。自分に合うものを選ぶのは危険じゃない事を第一に細心の注意を要するのだ。

時間だけはたっぷりとあるので、沢山のカタログを矯めつ眇めつしつつジックリと選んだのは・・ブルーの大きいウレタン張りのステンレス製シャワーキャリー、座高はジャスト50センチ

自力で立ち上がれる50センチの座高で、ブレーキが両側にあり、しかも手の届く範囲の、下へ力を入れて押すと簡単に掛かるもの!ステンレス製で値段は高いが、車(キャスターじゃない)の回転も自在に動き良さそうなこれしか無いだろうと当たりをつける。

台所仕事を、又する予定なので自動で上下する電動式を,キッチンの側のトイレに設置したい!と決めていたが問題もあった。今までのカタログには便座が斜に立ち上がる表示ばかりで、これは前のめりが怖い!・・・困ったな?と思って目を凝らしてカタログを見ていたら、何と!小さく小さく気が付かない所に水平に上下するタイプ有り・・・を発見しました。値段が水平の方が安いせいでしょうか?TOTOさん!何であんなに見難い小さい表示なんでしょうか?真に不思議だ。

これだけ揃えば私の退院は靴が間に合わなくとも大丈夫じゃないか?と確信できたのです。気持ちはもう退院へまっしぐらです。

障害者は65才で介護保険の権利があるので早速、区役所に手紙で申請書を「本人ですが入院中につき・・」と事情を書いて送付すると2日後に元気な福祉士の方が飛んできてくださいました。私の不満を聞くと、「ケアマネージャーさんは病気について詳しい人が良いでしょう」と即断してくださいました。

それから退院までの僅か2週間に病院へ来てくださったお二人のケアマネジャーさんは私の選んだ商品、シャワーキャリーを実際に運んで病院へ来てくださり「お独りだけでこれだけの品、調べてお選びになったのですか?」と非常に感動してくださり、かえってビックリしました。
誰も頼りにならないなら自分の事は自分がやっぱり1番良く知ってるって事でしょ?、自分で全部やれたのなら幸せってもんです。

しかし、本来ならばこれらの介護グッズも病院側からデータの提供や提案があってしかるべしなのだが、一般的(健常者用)な物しか情報は無いようだった。
結局、病気や障害によって使う道具は個人差があるので何度も納得いくまで調べ、必ずデモを借出すのが良いでしょう。

どの会社も営業が心良く応じてくれるのが唯一うれしい事でした。
カタログで見てるだけだとサイズやブレーキ等の高さや硬さ具合などが解らず失敗することが有るからです。

靴は左が合うだけで右がダメ・・・結局間に合いそうにないので、ついに下の美容院で髪をキャラメル色に染め皆に拍手されながら浮き浮きしてると担当医が「僕は許可してないよ」
「先生が許可してくれなくとも私は再来週には、家に帰ります。留守番の母がもう限界だと思うから・・」
「え、独り暮らしじゃ無いの?」先生は一番始めに患者について得る個人情報も、病院業務が忙し過ぎて耳を素通りだったみたいです。
「90才で一人留守番?」魂消たお顔で目をパチクリ、今までになく人間的な表情でした。


  1.  医療従事者の方々のご苦労と多忙さは、友人などから聞いて知っているつもりですが、患者は「私とあなた」という暖かな関係を(100%)でなくても、求めているもの。
     医療従事者も、わざと患者を邪険にしているのではないと思いたいものですが、なかなか難しいものがあるのでしょう・・・。

     また、福祉用具や身体が思うようにならない人向けの生活用品、数年前からいわれている「バリアフリー」の考え方から、家電品や住宅の各種什器(手洗いとか浴槽とか)に色々と工夫されているのでしょうが、市場が小さいからか、未だし、という感じでしょうか。

     それにしても・・・。
    >魂消たお顔で目をパチクリ、今までになく人間的な表情でした。
     おつらい立場でしょうに、冷静にあるいは、ユーモラスに自分の置かれた立場あるいは、他者を観察するPatraさん、頼もしい!
     思わず、クスリと笑ってしまいました。

    コメント by 酔仙亭 — 2007/9/24 月曜日 @ 12:17:05

  2. 酔仙亭さま
    お体の調子はいかがですか?連休で休むとかえって疲れるものですよね、お大事になさってください。
    福祉用具はシェアが少ない事と国からの補助金を見込むせいでしょうか?、単価設定が高いという矛盾があるようです。デザインも悪いので、それだけでもがっかりします。
    入院中は兎に角、忙しい看護師さん達を患わせないように工夫してましたよ(笑)
    患者の私が懸命に気を遣ってましたね〜
    ほんのちょっとの力を加えるだけで大丈夫なんですから自分でも??笑いながら挑戦してました!

    人を観察するのって大好きなんです、子供の頃から・・・あだ名つけ名人でした。

    コメント by patra — 2007/9/24 月曜日 @ 12:57:15

  3. えっ、あだ名つけ名人??(笑)
    福祉用具にはまだ縁のない私には、想像するだけですが、大変なのでしょうね。
    人に任せないで自分でやっていらっしゃるpatraさんは偉いです。
    先へ先へと準備する人なのですね。
    私もどちらかというと同じかも・・・

    コメント by sakura — 2007/9/25 火曜日 @ 5:02:58

  4. sakuraさん
    膝曲げのリハビリをすぐ忘れてしまう此の頃です。
    心の中でこっそりとあだ名をつけ、満足するから,変わった子でしたね。
    4才の時,自分につけたあだ名はコンニャクさん、グニャグニャしてないで!と親に年中言われていたからです(笑)

    補助するものが無いと先へ進めないからどうしても用意周到になります。
    同じですか?
    それは良い習慣ですよね?と言い切りましょうよ♪(笑)

    コメント by patra — 2007/9/25 火曜日 @ 11:20:09

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