2005/12/18 日曜日

らくだの涙

Filed under: 感想 — patra @ 1:29:44

最近子供を可愛がれない・・・そんな若いお母さんが増えているらしい。ニュースで虐待が報道されるたびに「何故、わが子を愛せないのだろう」と不思議だった。
そんな時、偶然wowowでらくだの涙   
・・というドイツ映画のドキュメンタリーを見ました。
モンゴルの平原に暮らす家族の単調な暮らしを追ってゆくカメラ・・。風や空や砂嵐の中で羊やラクダを飼う若い夫婦と彼等の子供、兄ちゃんと弟とお爺さんお婆さん。
草原はラクダのお産の時期です。
次々に産まれて来るラクダ。難産で苦しみ抜いてやっと白い大きな子ラクダを人の手を借りて産むお母さんラクダがいます。何故か上手に子育てが出来ません。

お乳を求める子ラクダを蹴ります。嫌って逃げまわる、激しく鳴く・・・と母性が欠落しています。
家族は母ラクダの後ろ足を縛ってみたりヤギの角に入れたミルクを子ラクダに飲ませたりしてみますがドンドン子ラクダは弱っていきます。

パオの集落の長は「もう音楽の儀式しか無いね」と兄弟を2頭のラクダに乗せて遠い県庁まで馬頭琴奏者の楽士を呼びに行かせます。
丸一日かかって辿り着いた町ではオートバイにTVもある現代的?な暮らしが弟の目を惹きつけます、一方パオでは電池で聞くラジオが唯一の文化です。

兄弟がやっと戻った翌日には町からオートバイに乗ってやってきた楽士は弦を震わせ良い音のメロディーを母ラクダに聴かせます。
若いお母さんが綺麗な声で一緒に歌う・・・・それだけの事なのに優しく美しい歌声は草原中に響き渡り・・お母さんラクダの目から涙がこぼれはじめる。そして側に連れてこられた子ラクダを、今度は嫌がりもせずに優しく匂いを嗅ぎお乳を飲ませはじめるのです。

たったこれだけのお話に大切な物が凝縮されているように思い「ハッ」としたのです。

人間の若いお母さんも難産だったり生活の不安だったり愛の無い出産を強いられたらどうだろう?
恐れや恐怖のような感覚を出産で味わってしまったら子を憎むのでは無いかしら?優しい言葉で抱き締め励ましてあげたり、美しい音楽がラクダの母さんにも大切ならば、より人間の母さんにも必要なんじゃないかしら?
ラクダと一緒にするな!と叱られそうだけど、優しさや気持ちの良い音楽を・・全く知らない人が「母親」になるなんて可哀相すぎる、誰かが教えてあげない限り不安に苛まれるだろう。妊娠時期に孤立させてはいけないのだ、と思った。

私の妊娠時、モーツアルトのレコード盤と共に飛んできて励ましてくれた友が居たことを嬉しく思い出しました。
にっこり笑って励ましてあげたい。優しくしてあげたい。そうして大丈夫を若い友人に沢山伝えてあげたい。それとこの映画を教えてあげたい。


RSS feed for comments on this post.

© 1999 - 2023 Patra Ichida, All Rights Reserved.