歌の本
小学生の頃、母は学芸会のスターだった、よく独唱をしたのよ!と聞くわりには生まれてこのかた母の歌う姿をみたことがなかった。
カメラマンの国房先生の出された本は懐かしい国民唱歌が大きな字とこれぞ日本の子供!という健康な笑顔の写真と一対になって満載、母にあげた。
「何よ、これ」「歌えるのが沢山、載ってるでしょう」「どれどれ・・・」
「卯の花のにおう垣根に ほととぎす 早も来鳴きて
しのび音漏らす 夏は来ぬ・・・
黄色いメゾソプラノだった。
なんで歌わなくなったのか聞いたら父が「歌うな」と言ったそうだが、父は正しかった。