悪い男・・・と高木敏光
読んだのはこの真っ赤な不気味な本です。「クリムゾン・ルーム」普通ならまず隠居が手に取ることもない若者の本でしょう。爆発的ヒットの脱出ゲームと連動した同じ作者が書いた本です。
フィクション、ノンフィクションの境が無い不思議な導入が先ず興味を引く上手な設定で小説としての骨格は、相当にきちんと押さえてあるので、「素人にしては上手過ぎ・・・器用すぎて何か変!と妙な感心の仕方をしたのも、一昨日現れた高木さん本人が著者でしかも実名で彼自身の仕事のバックグランドが舞台なのであるからゾワゾワした奇妙な印象が強烈なのでした。
後で調べたら何と高木さんは小説家志望で早稲田を出たそうです。成る程、基礎が見事に出来ているわけだ。
高木さんの事は殆ど知らないので、家にあった私の秘蔵のウイスキーGlenFiddchの15年物を,自慢げに出したら、それが私の知らないうちに封が開けられ、底に3分の1しかないのを知って、相当に憤慨してらしたのも小説を読んでいて腑に落ちた。
本物の作家と知っていたら招かなかったぞ、迂闊なり。
やたら質問するのでおかしいと思ったが・・鋭い物書きの観察眼に耐えうる体力が最早無い(笑)
ボトルの肩が汚れていたのだ。
私の秘蔵のウイスキ-GlenFiddichのボトルがベタついて汚れていたのだが,私だってこれは赦せない。これは昔の家のバーで私以外の誰かがチビチビと試飲しては丸い箱の蓋を閉め、何事もないようにソっと置いておいたのを知らない私が「自分で開けてね」と封切りだと思って飲んべいの高木さんに出してしまったわけだ。
犯人はあの頃の例の執事に違いない・・・憶測。
ボトルの肩が汚れているような,酒を出す・・・そんなシーンを嫌悪する描写が丹念に綴られ構成されたミステリーを私は「げ」っとか言いながら、でも最後迄よんでしまったのは彼の優れた力量だとおもう。
ただ読み終わって,最後が傑作に成るべきを、微妙なところで、良い人にして投げ出している。あんな終わりは無いだろう・・・
人物描写で一番描けていたのはバクチ好きの解体屋のオヤジと賭博場のヤクザ、ここのチンピラ迄、良く書けていて寂しく笑った。日本には、ここら辺のお手本がウジャウジャと居るのだな・・・
目の前に居た高木さんを思い出し痛々しい感想を抱いたのは事実です。この本を書く事で「K」という高木さんの分身を使って自分自身を殺したかったのだったら、見事にゲームは完結してます。エンディングにもう一ひねりあれば映画になる。韓国のキム.ギドク監督の「悪い男」くらいに仕上げるべきだ。
次回も書くしかないだろう。書きなさい。