くず餅考。
「お前、今、いくつなの?」
父が、葛餅を不器用な手つきでフォークに挟みながら聞く。
「86!」と口一杯に頬ばりながら母が答える。
「そうか、良く頑張ったよなぁ」と言いつつキナ粉を鼻息でまき散らしながら、これも旨そうに顎を動かす・・・口のまわりを黒蜜ときな粉で汚す老父に棚の後ろから抜いたティシュを渡しながら「ほら、落とすったら、お皿を口元へ持って食べなさい」とひとしきり煩く注意する私。10時のおやつのひととき・・・
天野屋の納豆は、良い大豆の匂いがする。全く臭く無い。週に3日は納豆を食べること!と医者に言われたのに匂う納豆を嫌う父の為にわざわざ調達した朝。、ついでに決まって買ってくる葛餅は我が家の大好物なのだ。早食いの母は「あ〜美味しかった。ほんとだ、買って直ぐ食べるとこんなに美味しいのねぇ」と猫もびっくりの舌でぺロリとお皿まで綺麗に嘗めてから「お爺ちゃんこそ頑張ったじゃない。65才迄は、とても持たないだろう、と言われたのに・・・」と得意そうに答える。
神田明神の横手にある天野屋は大粒の納豆と甘酒、この葛餅で有名な店なのだが、私はこの葛餅を5月と今頃の季節から食べるのが特に好きなのだ。冷蔵庫には入れずに買たらすぐ食べる!という流儀をひたすら貫いている。冷やすとグルテンが固まって弾力が落ち、葛、独特の香りがなくなるように思うからだ。すぐにお皿に小分けする。三角の葛餅、きな粉たっぷりに皿から流れ出ないように黒蜜を注ぐ。慎重に蜜をまぜないと口の中できな粉に咽せるので注意しながら、静かに食べる、これが最高に旨い。
ところが最近、静かに食べる・・が難しくなっている。父母がとにかく喋る、喋る。思い出すことが多いのだろう、江戸前の食べ物が出ると決まって話しが弾み始める。そしてどちらかが息と声と食べ物とを上手に交通整理できずに咽せるのだ。
「いい?もう、一度に二つの事は出来ないからね! どちらかにしなさい! 喋るか、黙って食べるか、分かった?」と言いながら水を飲ませたり、大騒ぎ。「うん、うん」と赤い顔して咳き込み、ひぇ〜と笑う。お餅を咽に詰まらせる老人達、きっと楽しくて笑うのと喋るのと息するのを同時にしちゃうからなんだな〜お正月に多い謎が一つ解明されたみたい。要注意月間ちかづく・・・。
「老人問題」と書くとすごく大袈裟な感じがしてしまいますね。
最近のマスコミでは「老人」と言う言葉も、NGになると言うことを聞いて驚きました。
「お年寄り」と呼ぶのでしょうか?
「高齢者」と書くのでしょうか?
とにかく、年を取ってゆくことはどうしようもない。
単純に諦めるか?
イヤでも戦って若さを保つように頑張るかであろう。(笑)
僕はなんだかそのことを考えると楽しいのだ。
ドンキホーテのように、強大な敵に戦いを挑むような気分がしてくる。
どこまで頑張り続けられるか?
本当に楽しみである。(^_^)
コメント by 変人 — 2004/11/12 金曜日 @ 13:23:25
こんにちはpatraさん。
会社に人間が少なくなったのでちょっとだけネットタイム(笑)
いつも、patraさんのおうちの様子が生き生きと書かれていて、読んでいてふふ、って微笑んじゃいます。
でも思い当たるところがあるんだよなー
うちに、まだおばあちゃんがいたころのことなんか。
たしかに食事中に楽しいことも大事だけれど、その楽しさも年をとると敵になったりもするんだね、うちも気をつけなくちゃ。
でもきなこはむせるよね、お年寄りでなくても・・・・
葛餅おいしそうだなああ、食べたくなっちゃったな・・・
コメント by rosemary — 2004/11/12 金曜日 @ 13:50:53
>変人さん
老人問題・・・なんか嫌な言葉ですよね〜
仙人、先人、先行者、何かロボットみたいだけど(笑)先に手本を見せてくれる人たち。
もちろん、良い手本も悪い手本もある。それは学ぶ人のセンスの問題。
我々後輩は先人に学ぶだけで良いのですから、ありがたいこってす。
君の立派な老学ぶりを見れないのは残念だな、しかもあと60年もありますね。
>rosemaryさん
楽しみが敵になる!そうなんですね。若わかしい、元気そう〜とチヤホヤとかの慢心もだめになる事もある。
老いてなお、脳が壊れないための努力、結構わが両親はやっていますね。
歩くとかの運動より、脳の活性化。それは本です。父は英語の学術書、母は乱読ですが好奇心が凄いです(笑)
コメント by patra — 2004/11/13 土曜日 @ 1:26:40