2012/3/10 土曜日

「ミルラ」 Myrrhをたずねて・・・

Filed under: 人物 — patra @ 1:15:56

2012-3-4-11

「ニジンスキーの牧神の午后」bY Sawako Goda  60号新作

合田佐和子さんは私にとっては非常に大切な画家なのですが、最近の若い人は彼女をしらない人が多いので時代の入れ替わりの激しさに改めて驚いてしまいます。
5月の個展のタイトルテーマが決まったそうす。
ミルラ・・・Myrrh 没薬(もつやく)と読みます。
東方の三賢者の寓話は知っていても,直ぐには「もつやく」の文字が頭に浮かびません。焼き鳥のモツが浮かんでしまう情けない隠居ですが漢字で書くと没をもつと読むのですから,普通では中々読めません。

大層むずかしいテーマですが、とても佐和子さんらしい題名だと思いました。

「旧約聖書によると、キリスト誕生の際、東方から来た三人の賢者の貢物の中には
乳香(偉大な預言者の証)と黄金に(偉大な商人の証)没薬(偉大な医師の証)が入っており、キリストは乳香を手にしたとして有名ですが、佐和子さんは偉大な医師の証の没薬をテーマに選んだのが今の病んだ日本と重ね合わせると深い祈りが籠められているように感じられます。

佐和子さんから送られて来た個展のテーマに寄せる紹介文をお許しを得たのでご紹介しておきます。

「ミルラ」をたずねて
私の作品はレンズ効果によって出来上がっています。
レンズを通したものがそのほとんどです。
クローズアップしたものがそのほとんどです。

それとともに、以前から ミルラ(Myrrh)という語感・響きに魅せられ、時折 絵の
タイトルにもしてきました。

その神聖・受難という意味あいをもつ香料・没薬(Myrrh)の香りというのが、実にことばにたとえようもないもので。とらえどころのわからないこの香りを、作品全体で表現しようとしたものが今回の展示作品です。

その香りの一端でも表現出来ていれば幸いです。
ミルラは東方の三博士がイエスの誕生の際に黄金・乳香とともに捧げた香料でもあります。
そして鎌倉における初めての個展を十文字美信さんのギャラリーで出来るのは嬉しいかぎりです。
                       
                  合田佐和子

「ミルラ」Myrrh の言葉ではとても表現できない,独特のその香りを絵のシリーズとして色で描き現したかったそうです。

うろ覚えの漠然とした知識しか持たない私へ電話口でスペルを教えてくださり淡々とテーマを読み上げてくださり、遂に私の要請に応え印刷される前のデーターを送ってくださいました。

「とても良いタイトルだと思いますよ。今の日本に、人々の心に、この医師の証として捧げられる「ミルラ」Myrrh…没薬はピッタリなテーマだと思う!」とお伝えするととても嬉しそうでした。

鎌倉近辺で個展をしたい!という希望だったのは一昨年の冬で十文字美信さんのギャラリーBをご紹介しました。
東京まで通う体力も今は全く無い状態での創作活動ですから,薄氷を踏むような思いでハラハラと応援していました。
会期はH24年5月10日から2週間です。(1週間短縮です。)
ここは写真家の十文字美信さんんがオーナーでしたから話はトントンと進む筈が3/11の東日本大震災などで手間取り、結局1年延期となったのです・・・

「8分迄出来上がったのだけど、今日・・・、もうこれで良いかな?と思った」
と電話を頂きました。ネットで届いた画像は佐和子さんらしく変わらず清潔で染み入るように一途でした。
2、3の対象モデルが具体的に過ぎテーマを邪魔するようにも思いましたが、佐和子さんは、でも出したいの!!と無邪気に笑います。

真っすぐな瞳のキリストがありました。心から購入したいと思う深い癒しの瞳です。

テーマとなった「ミルラ」はギャラリーで是非ともご覧になって頂きたい。

体力勝負でもある個展を前に出来るだけ安心させてあげたいけれど私に出来ることは話を聞いて励ます事だけ・・・
画家の闘いはいつも個人的で且つ、非常に孤独な闘いなのだ。38キロという細い身体で何十年も闘っている佐和子さんには寒さが一番の敵だったので去年体調を崩されたと伺い本当に心配しました。どうにか漕ぎ着けることができそうですが,目眩に苦しみながらの個展です。祈るような思いで応援しています。

佐和子さんにしか描けない世界…アンディーウオーホールよりもローランサンよりも合田佐和子が好きなのです。愛してやまない画家です。
宝クジが当たったならば温かい暖房のあるお風呂場にしてあげたい。身体が冷えないように床暖房のあるアトリエにして差し上げたい。と叶わぬ夢をおもう私なのでした。


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