養生の心
人寿(にんじゅ)には自(おのずか)ら天分有り。
然(しか)れども又意(おも)う、
「我が身は即ち親の身なり。
我れ老親に事(つか)うるに、
一は以(もっ)て喜び、
一は以て懼(おそ)れたれば、
則(すなわ)ち我が老時も
亦当(またまさ)に自ら以て喜懼(きく)すべし」と。
養生(ようじょう)の念は此れより起る。
【訳】
人の寿命には自ずから天の定めというものがある。
しかし、またこうも思う
「自分の体は親から授かったもので、
親の体も同然である。
だから、自分が年老いた親に仕えて、
一方では長寿を喜び、
一方では老齢を心配するように、
自分が年老いたときもまた、
自分で自分の長寿を喜び、
それを心配するべきである」と。
養生の心はこうしたところから起きるのである。
『佐藤一斎一日一言』より