老人ウオッチング

今年になって3階から1階に寝室を移し、初めて老人達と生活をともにしてみた。 
彼等は87歳と81歳の父と母である。 
いまだに元気で2合の晩酌を欠かさない父、料理下手だったが父好みを会得してなんとか主婦を現役でこなしている母。 私の役目はそれとなく目を光らせて2人の生活に支障がないように見張ることとお掃除くらいだが、自立している両親にそのままのペースを守ってもらいながらもそこは老人、ウッカリが多く油断も許されない現実があるのだ。 
3階へは成長した息子たちが移った。 我が家は臨機応変にそのつど模様替えをして成長に対応するのが昔からの習慣。 庶民の生活の知恵というものだ。 
老人達の寝室は2階なので、先々の必要性も考慮にいれて去年階段にリフト椅子をつけてもらったが案の状便利だ。 私と息子のほうが多く利用しているのだが(笑)、あればイザとゆうとき安心できる。 父が正月に転んだときなど役立った。 
老人カラーを一掃して若々しく模様替えも済ませたら、部屋も生き返った。
長生きをするということはストレスを溜めない暮らしかたをしてるということだと言い切っても過言ではないが、新旧お互い歩み寄る心もたいせつだ。 
いままでは所帯が別だったので適当な距離を保てたが、今年からは毎日鼻をつきあわせる暮らしがはじまったのだ。 どのみちいつかはたどる道であるなら、おたがい元気なうちにいろいろ手直しできるほうが良いのでは?と考えたからである。 2〜3年前からそのために用意もしてきた。 
いざ一緒になってみて起きるトラブルはとっくの昔に経験済みだ。 
2人を見ていると今のところ元気である。 下手に手だしをしようものなら返って老け込ませる結果になりかねない。 永年の生活ペースが確立しているのである。 時期早生だとしても、早く慣れるほうが自分としては楽だ。 そこで私はアッサリ主導権を放棄して下宿人風なスタンスを取ることにしてみた。 自立させておこうぜ!しばらくは!というわけだ。 
結果、まったく問題が起きない。 母など嬉々として世話をやきたがる。 5〜6年前の大病が嘘のように元気になった母は生彩をおびて見える。 
やることは漫画的なので細かく言うと喧嘩になる、だから見ないふりをするのが肝心だが、基本的に父の世話はいままでどうり母の役目である。 というと甲斐甲斐しくきこえるが父も勝手自分流に身の回りは何でも独りでこなす、手間いらずの人なのだ。 
私の役目は全ての掃除である。 それと冷蔵庫の管理、貯蔵品のチェック、廃棄物のチェック等だ。 あとたまぁに接客用の食事作りと常備菜の作り置きぐらい。 楽勝である。 
ところが毎日暮らして困ったことはTVの音量の凄さだ、耳の遠くなってきた父が補聴器を頑としてうけつけないのである。 みかねて息子が祖父の耳もとにスピーカーを設置してくれたが、それでも目がまわる大音響に頭がボーッとしてしまう。 私が耳栓をして凌いでいるが、頑固もたいがいにしてもらいたい。 
また、父と母は冷房を嫌うのである、目の敵にするから台所と食堂に冷房が無い。 
で、うっかり1階は例年のように冷房無しでこの夏を迎えたのである。 私専用の接客用の小部屋やバーに冷房があるのでそこへ逃げ込めばなんとかなると考えたのが甘かった。 
若い私が完全に夏バテなのに、老人2人は食欲も衰えず元気なのである、いったい我が家の老人はどういう構造になっているのであろうか? 

「一日3回はシャワーを浴びている」 「規則正しい」 「食事時間は絶対まもる」 「食べ過ぎない」
「自分のペースを崩さない」等が秘訣らしい。 若者に出来ないことばかり平然とこなしている。 
加えて「適当に我が儘である!」
父は5時に晩酌をはじめ6時には部屋に戻り野球を観戦し一旦眠る。 そして夜中の1時半に起きて夜食を自分で作るのだ、台所を散らかすので困るのだけどその日何を食べたいか自分で決めたい!と言い張るのである。 ダグウッド漫画が好きなせいなのか?夜食フリークなのだ。 
パンの時は必ずレタスとハムかチーズ、ジャムは苺でなければダメ!それにスキムミルクである。 インスタント焼そばやラーメンが食べたくなることもあるし、鍋焼きが良いときも。 
30年来の習慣なのだ。 材料を用意しておきさえすれば自分でゴソゴソ作って部屋に持ち帰り御満悦である。 母は8時にはこれまた自分の部屋で寝てしまうから付き合えないと、2人の暗黙のうちの約束ごとになっている。 
といっても歳はかくせない・・。 10年くらい前から心配なのでその時間に降りてきて火の始末と後かたずけをするのが私の日課となっていたのだが、火の消し忘れは何度かあったのだ。 
それでも夜食の習慣は譲らない頑固親爺でもある。 
私が見兼ねて日本そばや冷やし中華、あるいは素麺を作り冷やしておくと流石に楽らしく、晩酌の時リクエストするようになったのでだいぶ散らかりかたが減ったが悪い癖である事に変わりは無い。 夜中に冴えるタイプなのだ。 困った事に私も息子もおんなじ夜型である。 

(冬は煮込みウドンや雑炊を作っておきレンジで暖める方法も教えた。 ある程度自由にさせつつ管理しないと危険なのは子育てと変わらないのだが禁句は「駄目!」とか「危ない!」とか言い過ぎることである。 すぐふくれるからだ。 そこも子育てと似ている。 冬は父の夜食作りが終わるまで暖房は落とさず、彼の部屋はデロンギでポカポカだ。)

夜食を食べ終えると御盆は自分で下げるが洗わない。 その後水浴びをして明け方まで英文の考古天文学の本と格闘?しているらしい。 4時頃、最後のシャワーを済ませてお昼まで眠る。 入れ違いに母が起きてくるのが朝6時である。 水まきやゴミ出しが終わるとすぐシャワーは欠かさない。 8時頃朝食を一人か稀に私と食べる母が決まって言う台詞が「ごはんが美味しくて困っちゃう!」である、幸せものだ。 父が起きる12時までに買い物や郵便局の用を済ませて、ノッソリ出てくる父に「おはよう」と元気に声をかけるのが日課だ、そしてNHKの連続TVを揃ってみながら、「御飯が美味しくて困っちゃう」をくりかえすのだ。 
食欲旺盛と冷房を使わない事、水浴びが我が家の老人の元気の素であるのは確かなようだ。 そんな原始的なことはとても真似できない。 したがって冷房部屋に逃げ込みつつ長生きからは、どんどん遠ざかる私である(笑)、とてもたちうちできる自信がない。 
参考までに扇風機と除湿機に空気清浄機はフル稼動である、そして人の居ない部屋は殺菌灯も欠かさないのが2人の流儀でもある。 チャッカリ分明も取り入れている知恵者なのが侮れない。 

とりあえず朝は母にまかせ、音の攻撃をかわしつつ夜中の父を見張りしてその後お掃除するプログラムにきめたら昼夜逆転の人生に・・・そうなるとネットをやるしか無いでしょう? 


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